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主婦が麻薬売買に手を染めた理由ーー『ローサは密告された』が描く、スラム街の現実

フィリピンの首都マニラのスラム街で、ローサは気のいい夫と子ども四人で家族経営の雑貨店をやっている。本作『ローサは密告された DVD』の公式サイトの情報によると、フィリピンの貧困率は、2015年時で約22%とかなり高く、貧困層のほとんどはスラム街に暮らしているそうだ。

 スラム街では犯罪率も高いが、地域の住民たちはよっぽどのことでないと犯罪とは認識していないトランスフォーマー5 DVD。一般社会から隔絶されたスラム街には、タクシーさえも入ってこない。しかし、日本でいうと昔ながらの下町のような近所付き合いがあり、みんなで助け合いながら生きている。

 そんなスラム街の一家族であるローサは、家族を養うために店の儲けだけでは到底やっていけないために、少々の麻薬を密売しているパイレーツオブカリビアン 最後の海賊 DVD。海外のスラム街での麻薬売買は、半ば公然と行われているのが実情で、日本でしか暮らしたことのない人間には想像できないほど、麻薬というものが身近に存在している。

 フィリピンではドゥルテ大統領就任以来、過激な麻薬撲滅政策の超法規的措置により、麻薬に携わる者は警察や自警団に殺されている。アンダーハーマウス DVDその数は、同じく公式サイトによると、大統領選翌日の16年5月10日~17年5月9日までの1年間で3407名にものぼっているとのこと。そんなフィリピンや東南アジアでは、街の悪い人間が警察官になることが多いと言う。実際にフィリピンなどでは、昔から観光客相手に警察官が麻薬所持を捏造し、賄賂を要求することもあったという話も聞く。

 そんな環境の中、日常的に店で麻薬密売をするローサ夫婦は、ある日何者かに密告され警察に連行される。

 フィリピンの警察官の給料は驚くほど低賃金で、上司への上納金を収めると自分の給料などほとんどなくなってしまう。賄賂を支払えば見逃してやるという脅迫も、密売人や客から他の密売人の密告を得ることにより、継続的な収入になるので、収入の少ない警察は手を染めざるを得ないのが実情なのかもしれない。

 そんなフィリピンの警察が、ローサ夫婦を逮捕したとなれば、その要求は火を見るより明らかだった。貧困に喘ぐローサには、警察の要求する金額を支払えない。どうしても金が欲しい警察は、逮捕と引き換えに密売人の密告を要求する。貧困に喘ぐ家庭で、子供だけを残し刑務所に行くことができないため、ローサは苦渋の選択をする。

 「もし自分が」と重ね合わせてみると、この状況の緊迫感は身につまされてしまう。こんな究極の選択しか残されない状況は、本当にローサ自身のせいなのだろうか?

 もちろん、麻薬の密売は決して良いことではない。しかしスラム街の住民の間で、麻薬は日常生活の一部となっている。事実、海外のスラム街に行けば、街のいたるところに密売人がいて声をかけてくる。東南アジアなどで迂闊に観光客などがその話に乗ると、売人自らが警察に密告する場合もある。

 ローサは、家族みんなで頑張って店をやっていても食べて行くのは厳しい。スラム街の住人同士の助け合う関係でなんとか生活が成り立っているが、麻薬を売らなければたちまち貧困に瀕してしまう。警察もスラム街の住人も、ここまでしなければ生活できないというフィリピンの国家事情が、映画のいたるところに垣間見える。

 警察はローサの仕入れ先の密売人を逮捕し、その売人からも脅迫して金を得るが、必要な金額には届かない。どうしても金が欲しい警察は、密告すれば解放するとしていた約束を反故にし、残りの金額をローサに要求する。そして、金を払わなければ帰してもらえない両親のために、子供たちが金策に走る。

 人質をとって金を要求するという犯罪を、警察官が行っているという事実に驚く人は多いだろう。しかし、腐敗した権力は、そもそもの基本構造が非人道的なのだ。本作を通じて、それが痛感させられるはずだ。

 4人の子どものうち3人は成長しており、ローサの指示通りに動けたり、自分なりの方法を探れることが不幸中の幸いとも言えるが、そうしたシーンでも「もし自分や自分の家族だったら」と考えると、どうしようもなく憂鬱な気持ちになってしまう。

 麻薬密売という法律違反を犯すことは、間違いなく良くないことだ。しかし、海外の密売人に話を訊いたことがあるが、逮捕されて足を洗おうと思っても、短期間に保釈金などの大金を作るために一番手っ取り早いのは、やはり麻薬密売なのだと言う。

「一番金の取り立てが厳しいのは国だ。マフィアはツケを許してくれる。返さなければ酷い目には遭うが、金を作る手段は与えてくれる。しかし国は短期間の間に金を払わなければ逮捕する。どうすれば生活をしながら短期間に大金を作ることができるんだ?」

 作品中のワンシーンで、ローサが密告した仕入先の売人が、ローサ家族の話を壁越しに聞いているシーンがある。自分を密告した人間がわかってしまえば、スラム街の密接な人間関係も破壊されていくだろう。

 ローサを密告した若者がスラム街の住人により、ローサの息子に知らされる。金策のために家財をスラム街で売り歩いている途中に、その若者を発見した息子はその若者に対し暴力による報復を加える。身近な人間の若者同士でさえ、密告された側の人間による報復というものが起きるのが必然の環境だ。そのシーンを観るだけで、ローサが密告をしたことによって逮捕を免れたとしても、その後の報復が恐ろしいものであることは容易に想像がつく。ましてや相手は、麻薬の卸売をしている者で、闇の社会と大きく関わっていることは確実なのだから。釈放されたとしても、警察に支払うために抱えた莫大な借金返済と、密告した相手からの報復により、自分や家族が身の危険に晒されるといった問題に直面せざるを得ない。

 国家権力と闇の社会。どちらに転んでも究極の選択をしなければ生きられない。そんな状況を、他人ごとだと高を括ってはいけない。貧困から抜け出すことのできない負のスパイラルは、世界中ではびこっている。犠牲になるのはいつも弱い者たちばかりだ。それが例え警察のような国家機関の中でも、スラム街でも構造は変わらない。その原因とはいったい……。そんなことを自問させられる映画である。

 主演ローサ役の女優ジャクリン・ホセは、第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を獲得している。ほかの出演者たちのリアリティある演技も素晴らしく、本当のスラム街の街並みやカメラワークも相まって、まるでドキュメンタリー映画を観ているような気分になる。

 テーマ、カメラワーク、出演陣の全てが相乗効果を生み出し、深い問題提起をする『ローサは密告された』は、現代社会に生きる人間たちが、目を逸らすことのできない映画である。



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